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…そうでしょう、間違いなく私はやっていない。
もしマリアンヌ男爵令嬢への虐めが本当にあったとするならば、それは私以外の誰かか、――マリアンヌ男爵令嬢が自身に行った、自作自演かのどちらかだ。
「そんなのダメ!!」
「な、何を怒ってるんだい、マリアンヌ。調査してもらえれば、君の証言は国が認めた証拠となるんだよ」
「だって!……そうよ、私、そんなプライベートなことを他人に覗かれるなんて嫌っ…!」
怒っていたマリアンヌ男爵令嬢がふと、言い訳を見つけたのか冷静になる。
きっとこのまま、恥ずかしいとでも言って調査をやめさせようと考えているのだろう。
――男爵家よりも爵位の高い公爵家に謂れのない罪を被せておきながら逃げおおせようだなんて、そんなこと許される筈がないでしょうに。
身分を振りかざす気持ちは全くないけれど、誇りあるカレヌディーヌ家の令嬢として、引くわけにはいかない。
「申し訳ないですけれど、私も汚名を着せられたままいるわけにいきませんわ。国王陛下への直訴をやめる心算は毛頭御座いませんの」
「だ、だったら!ファルト様お願いです、やめさせて下さい!そんな恥ずかしいこと…」
「…ダメだ、マリアンヌ。国王陛下への直訴は、本人しか取り下げられない程強制力のあるものなんだ。恥ずかしいかもしれないが、耐えてくれ。君の証言を通すためだ」
「そんなっ…」
――どうして、ファルト王太子殿下はそれほどまでにマリアンヌ男爵令嬢を信じることができるのだろう。
先程から、たとえ恥ずかしいという理由とはいえ不自然な程調査を拒否しているというのに。
いや、もしかしたらもう引き返せないとわかっていて、信じたいだけなのかもしれない。
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