冤罪と婚約破棄を押し付けられたようです。

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私には想い人がおりました。 その方――アスト様は私よりも爵位の低い家の方ではありましたがとても聡明でいらして、それでいて人懐こい笑顔で、話をすると心が落ち着くだけでなく、私も頑張らなくてはと背筋を伸ばす気持ちになるような、そんな方でした。 私がその方をお慕いしていると気付いたのは、つい先日私に婚約者ができたと聞いたときでした。 お父様から伺ったお話では、カレヌディーノ家にも利益があり私よりも爵位の高い方との縁談であるとのこと。 まだ詳細は知らされておらず、どこの方かは存じ上げておりません。 ――そのことを知ったとき、私はこの想いを口に出さないことを決めたのです。 ええ、よいのです。それが貴族社会では当然で御座います。 例え想い人がいたとしても、親の決めた家と家との婚約ですから、私達子供にそれを反故する権利はないのです。 …そう思っていたのですけれど。
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