小春日和

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「はぁ~、今日は本当に良い天気だね!桜もとても綺麗だね!」 「お前……、ほんとに元気だな。こっちはここに来るまででへとへとだっていうのに。」 「だって、こんなに良い天気なんだよ!これで、テンションが上がらない君のほうがどうかしてるよ。」 「何でもかんでも、お前基準にするなよ。お前に付き合ってると毎回、毎回倒れそうになる。」 「ほんとに、戸田くんは体力無いよね~。引きこもらないで、ちょっとは運動したらどう?」 「何で、自由時間を運動に当てなきゃならないんだよ。学校生活で疲れ切ってるのに、そこからさらに運動なんて、考えただけで酸欠になる。」 「……でも、今日は来てくれたんだね。」 「……お前、そういうのは卑怯だぞ。それに、今日は仕方なくだ。お前の誘いを断ったところで、またしつこく誘ってくるだろ。そっちの方が体力使うのは目に見えてるしな。」 「素直に来たかったって言えないのかな、この子は。」 「別に。嘘をついているつもりはないし。」 「はいはい。じゃあ、準備をしようか。」 「了解。ていうか、お前、もうちょっと荷物持てよな。」 「ちょっとは持ったでしょ。全部持たせてないだけで、感謝しなさい。」 「理不尽なんだよなあ。」 「じゃあ、ここからは私が準備するから。それでチャラでいいでしょ?」 「いいよ、別に。一人でシート広げるのも大変だろ?見てるだけっていうのも、嫌だから手伝うよ。」 「……結局、いつも手伝ってくれちゃうんだよね。」 「そっちのほうが効率が良いからな。早く帰るためにはそれが一番良い。」 「来たばっかりなのに帰るときの話しないの。……それか、早く帰りたいの?」 「はぁ……、悪かったよ。早く帰りたいなら、そもそもここに来てねえよ。」 「……素直なほうがもっと友達出来ると思うよ。」 「馬鹿か。そう出来てたら、こんな俺になってねえよ。」 「まあ、そうかもね。もし、そうじゃなかったら、私たち出会えていないかもしれないし。」 「……よくもまあ、俺みたいなやつに声かけたよな、お前。」 「私も物好きだからね。……物好きで、ほんと良かった。」 「……お前の方はほんと素直だよな。」 「まあね。それが私の取り柄だと思ってるし。……まあ、そのせいで損することもあるけどね。」 「俺は素直な人、嫌いじゃないけどな。」 「……戸田君も、最初に比べたら随分素直になったよね。」 「誰かさんのおかげでな。」 「最初の頃は、何考えてるか、ほんと分かんなかったからね。まあ、あの時の戸田君も可愛かったけどね。」 「馬鹿にするなよ。それに、俺のこと可愛いっていうのお前くらいだぞ。」 「え、他にはなんて言われるの?」 「……ごめんなさい。そんなこと言ってくれる友達、俺には居ませんでした。」 「まあ、色々あるけど、私は戸田君より周りのほうが悪いと思ってるよ。」 「そうか?もし、他に俺みたいなやつがいたら、俺は絶対声かけないけどな。」 「声かけれないの間違いじゃない?」 「……そうですね。俺にそんなコミュ力ありませんでしたね。」 「まあまあ、ごめんって。」 「別に、事実だしな。」 「戸田君は友達いないのは自分が100パーセント悪いって思ってるだろうけど、そんなことないよ。私は戸田君の心を開かせないほうにも問題があると思う。」 「いや、話しかけてくれる人は何人かいたぞ。そこで、上手く話せなかったんだよ。どう考えても俺が悪いだろ。」 「それは戸田君が話しやすい空気を作れなかった相手側も悪いでしょ。空気が悪かったら、誰だって話しづらいよ。」 「いや、それ相手に頼りすぎだろ……。それにどっちかっていうと、相手が折角、友好的に話しかけてくれたのに、俺がそれに答えられなくて空気が悪くなるって感じだしな。」 「まあ、私と最初会ったときもそんな感じだったもんね。ほんと、全然喋ってくれないから、苦労したよ。」 「……悪かったな。まあ、でもそういうことだよ。それってどうかんがえても俺に非があるだろ?」 「それはそうかもしれない。」 「だろ?だから、相手は何もわるく「でも、それで止めたら駄目なんだよ。」え?」 「戸田君は極端だけど、誰だって初めのうちはなかなか話せないものなんだよ。」 「それはそうかもしれないが……。」 「そういう人には自分からいかないと、そういう人って途中で止めて、勝手に離れていく訳でしょ?勝手に話しかけておいて、勝手に離れて……そんなの誰だって悲しくなるよ。」 「いや、まあ、一理あるかもしれないが……。」 「そんなのどう考えても、相手が悪くない?離れられた人の気持ちも知らずに。」 「暴論過ぎないか?俺だって、話しかけるっていうことをしなかった訳だし。」 「戸田君がそんなこと出来るわけないでしょ。」 「おい……。」 「だって、気を遣っちゃう人なんだよ。」 「……。」 「自分みたいな人が話しかけても良いかなって、考えちゃう人なんだよ。だから、話しかけても良いって思わせるまで、自分から話しかけないと。」 「……。」 「それに、こうして話してみると、戸田君面白いし。」 「面白くはないだろ……。」 「うんうん、めっちゃ面白いよ。私が思いつかないことを、ぽんぽん思いつくし。」 「……それは、性格の違いじゃないか?」 「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも、どっちでもいいんだよ。面白ければ。」 「そうか……。」 「うん。……じゃ、そろそろ準備できたし、お弁当食べますか。私、頑張って作ってきたから、いっぱい食べてね。」 「ああ、残さず食べるよ。」 「……それじゃ、何か無理して食べてる感出るじゃない。」 「いや、言葉の綾だよ。普通にお前が作った弁当を食べるつもりできたからな。」 「そう……。まあ、怒っても仕方ないから、許しましょう。」 「お願いします。俺もこういう時に気の利いた言葉言えないから、万年ぼっちなんだろうなあ。」 「私がいるから、ぼっちじゃないでしょう?」 「……まあ、そうだな。」 「じゃ、食べますか。……良い天気だからか、桜も綺麗に見えるね。小春日和だね。」 「小春日和っていうのは今の季節に使う言葉じゃないけどな。」 「もう、分かってるよ。私はこの言葉好きだからいつでも使いたいの。」 「はいはい。」 「適当にあしらう感じあんまり好きじゃないなあ。」 「結局、怒ってんじゃねえか、お前……。」 「別に、怒ってないですよー。それにお前じゃなくて、きちんと名前で呼んで欲しいなあ。戸田くんって、頼まないと名前呼んでくれないよね、いつも。」 「俺の性格を分かってるお前なら、分かるだろ?」 「分かりません。臆病で、なかなか心を開いてくれなくて、秘密主義な人のことなんてどうやったら分かるんですか。」 「十分分かってるんだよなあ。」 「そんなのいいから、早く私を喜ばせて欲しいなー。」 「はぁ……、分かったよ。俺と出会ってくれてありがとう、小春。」
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