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とりあえず、小川は祐作の殺人が何とか正当防衛と言えなくもないことに満足した。個人的には疑問がいっぱいだが、そこはまた後で聞くことにした。
そりゃ過剰防衛とも言える。もし過剰防衛と言う奴がいたら、クソガキと同じ目に遭わせてやればいいのだ。三日三晩、薬で体力が回復するたびに限界まで痛めつけてやればいいのだ。それで殺意を持たなければ、クソガキを裁けばいい。
また、レナドールがTCVにいた頃にクソガキにしたことを、耳をかっぽじいて聞けばいい。反吐が出るような話を聞けばいいのだ。俺も我慢したんだから途中退席は許さん。それでも過剰防衛だと言う奴には、口を縫い付けてやる。
「ペドロを殺したのは、つまりおまえじゃないんだな?」
小川は確認した。
「はい」祐作はうなずく。小川はそれを見てうなずき、祐作を見た。
「おまえが撃ったってことにしておけ」
「え?」
「ペドロを殺したか?」
小川はレコーダーの電源を入れ、疑問を挟む余地を与えずに言った。
祐作は少し戸惑い、それでもうなずいた。「はい」
「爆弾も自分でしかけたのか?」
祐作は小川の反応を見てうなずく。「はい」
「いい子だ」
小川は電源を切ってうなずいた。
「いい子には、ご褒美がある。楽しみに待ってろ」
小川は笑って、祐作の辛うじて大きな傷がなかった左肩を軽くおさえた。祐作はじっと小川がスキップでもするように病室を出て行くのを見送った。
ご褒美。そういう名前の鉄拳制裁じゃなく?
祐作は不安を感じながら、一人取り残された。窓を見ると、月明かりで明るい夜になっていた。
わからないことだらけだった。どうしてコロンビアではなく、ニューヨークにいるのか。誰がペドロを殺して、どうして自分が撃ったことにすれば都合がいいのか。一体誰の都合がいいというのだろう? それから、小川は何を怒っているのだろう?
これからどうなるのかな、と祐作は少しだけ思った。同時に、そう思った自分にも少し驚いた。これから、なんて考えたこともなかったからだ。やったことがないことには人は誰でも戸惑うものだが、祐作も思った。俺、もうヤバいのかもしれないな。
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