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「恋愛感情ではなかったけどな・・・。」 壱だった時の記憶をたどり、一人呟く。恋でも愛でもない。ただ、誰よりも汚い世界を見ずに、その優しい心を失くさないように、生きてほしいと思っていた。汚い世界はすべて壱達、兄弟が背負ったとしても。 プルルル・・・ フランのスマホが震えた。この着信音は父親からだ。フランはかけてくる相手ごとに着信音を変えている。 「ああ、フラン。今日も早く帰れるぞ。久々に家族で食事に行こう。」 壱としての記憶を取り戻す前、フランは父親と過ごす時間があまりにもなかった。家族との時間もなく、今よりも幼いころは母親になぜよその父親と自分の父親はこんなにも違うのかと八つ当たりをしたことがあるくらいだ。こんなふうに時間が取れるようになったのは、父親の仕事を、壱の時の兄弟がやっているからである。 「・・・そうだね、母さんも喜ぶよ。」 震えそうになる声を必死に抑える。このままではまずい!!壱の記憶から自分に向かって忠告が投げられる。何がどう、まずいかまでは分からない。けれどこの忠告は間違ってないと本能が言っている。
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