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「私、本当に参・・・さんのこと知らない・・・。」
抱きしめられる腕の中で懸命に訴えた。けど彼は微笑むだけで、
「姫様は参と呼んでいました。僕は姫様に名前を呼ばれるだけですごく幸せです。」
耳に甘い毒を注ぐように、参は掠れた声で耳元で囁く。その声に縛り付けられるかのように力が抜けて自分から参に縋りつくような状態になった。
「姫様は甘えん坊ですね。」
参はたしなめる口調だけどすごく嬉しそうだ。・・・自分がどこかに沈んでいく気がする。ここは・・・死の空間だ、生きているものがいる場所じゃない。
ガタン!
すごい音が突然して、おぼろげな状態から解放された。
「チっ!」
参は小さく舌打ちをすると私からゆっくり離れ刀を構える。
ガタン!
もう一度さらに強い音がした!するとずっと暗闇だった世界に光が入ってくる。入口の扉が開き、そこにはおじいちゃんがいた。
「おじいちゃん!」
私が呼ぶとおじいちゃんはこちらを見て顔を強張らせる。
「あんなに壊したのに・・・目覚めてしまったか。」
おじいちゃんが何か言った気がする。けど私の耳には届かなかった。
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