七と八

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七と八

「任務終了。」 七は目の前の男の頸動脈を細い、針のような刀で深く貫くように刺した。息をしていないことが分かると、刀を抜き、こびりついた血を宙で飛ばす。赤い滴が美しいと思えるくらいすべて同じ大きさで同じ速さで同じ方向に向かって真っ白な壁に模様をつける。 「なあ、七。」 見た目からも相当重いであろう鎌を悠々と肩にもたれさせている八が七の一つにまとめた艶やかな黒髪を見て言う。激しい戦いだったのに髪は全く乱れていなかった。 「何?」 ぱっちりした瞳を持つ七の顔が八の呼びかけで振り返る。けれど、八がもう何を言いたいか分かっているような感じだ。なので率直に言った。 「俺たち、ずっと人を殺しているよな?夢なのか?」 終わりがない人殺し。血をたくさん浴び、寿命も増え、肌艶もよくなりそして、鏡がないから分からないがきっと顔立ちもより端正になっているはずだ。戦いの後はいつもすぐ姫様に会えた。けれど、今は斬っても斬っても終わりが見えない。姫様に会えない。ほら、まただ・・・・。 「いつも任務が終わると体が重くなり、目を開けていられなくなる・・・。」 そう、深い眠りに襲われる。目を開けていたいのに、はやく姫様に会いたいのに、七と八は今日もまた、目を閉じ、動かぬ人形に戻ってしまった。
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