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井崎とふざけてじゃれあって、後ろにいた白崎さんに気付かなかった。
ぶつかった拍子にガシャッと嫌な音を立てて彼女のスマートフォンが落ちる。
「あ、悪い」
慌ててそれを拾って画面が割れていないかとまじまじと見た。
「だっダメ!!」
普段おとなしい彼女が珍しく声を張って、掻っ攫うように俺の手からスマホを奪い取っていく。
俺は驚いて固まったまま。
彼女はもう十メートル先を走っていた。
「徳永、何固まってんだよ。白崎のスマホに幽霊でも映ってたか?」
「……それに近い」
「え、まじか!どんな?」
「ドッペルゲンガー」
「……は?」
「悪い、俺……ちょっと用事あるから行くわ」
「ん?行くってどこに?」
アホヅラでキョトンとしていた井崎の質問に答えることもなくそのまま放置し、俺は白崎さんを急いで追い掛けた。
彼女のスマホの画面一杯に映っていたのは、紛れもなく俺だった。
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