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春夏秋冬~夏~(過激表現あり)
夏。
あれから治樹は幾度も悠を抱いた。抱いたというより、犯したという方が正確かもしれない。
業務後に拉致してあのホテルに連れて行く。最初の数回は例のはなだせんせいという名を口にしていたのだが、それも最近は無くなった。
誰なのか尋ねても頑なに答えない。それもまた面白くなく、その苛立ちを彼にぶつけていた。
近頃は抵抗もしないので、なんとなく張り合いがない。
「あちー…張り込み終わりましたー…」
「お疲れーで、どうだった?」
「んー聞き込みの感じだと黒に近いんすけど決定的な証拠もないしあたるのは危険っすね。」
「了解。報告書にまとめておいて。」
「うぃっす。」
「鷹橋くん、そっちの港区の方はどう?」
「はい。今御子柴さんが張り込んでます。五分五分といったところです。」
「おーい、その港区の件悠が今引っ張ってきちゃったぞ。」
「は!?」
「あーらら…取り調べ室に行って様子見てきて。」
「はい…」
また自分に何も言わず勝手に…引き出しから清涼菓子を数粒取り出しガリガリとかみ砕く。
ミントのすっとした感じと力任せにかみ砕くと少しストレス発散につながるため重宝していた。気付くと空だ。また買わなければ。
取り調べ室では怒号が飛んでいる。この声は彼だ。相手の母親らしき女性は俯き一言も発さない。
見かねた一課の人たちが悠を止めに入る。本来なら自分が行くべきなのだが…行くしかないか。ため息一つついて一歩部屋に足を踏み入れた。
「御子柴さん…やりすぎです。すみません。お騒がせしました。」
「テメェ離せ!!」
じたばたと抵抗を見せる。久しぶりに見る顔つきだった。ぞくりと嗜虐心を擽る。
周りには聞こえないように耳打ちした。
「…暴れちゃダメ、でしょ…?」
悠の四肢がぴたりと動きを止める。
そのまま彼だけを外に放り出し、治樹が取り調べを担当することになった。
「終わりました。」
「おー!お疲れ!自白取れたって?」
「はい。後は向こうでやってくれるそうです。」
「子どもも保護されて良かった良かった!鷹橋、お前やるなぁ!いやぁもっと前から貰っとけば良かった!」
「買いかぶりすぎですよ。あれ、お二人は。」
「ああ、あいつらはもうあがり。お前らも帰れるならちゃんと定時で帰れよ。」
悠はいない。荷物はあるのでトイレか。
支倉は目の下に薄いクマが描かれており日ごろの疲れを彷彿とさせた。
「室長もおうちに帰ってはいかがですか?俺で出来ることがあったらやっておきますので。」
「え?いやぁ俺は部下残して帰れねぇよ。」
「大好きなご家族に愛想を尽かされちゃいますよ。」
「あーうーん…じゃぁそうさせてもらおうかな。悪いな鷹橋、悠にも家に帰れって言っておいてくれ。」
「了解です。戸締りの鍵はこれですか?」
「そーそーじゃぁ後はよろしく!」
入れ替わりに悠が戻ってくる。荷物を抱えて帰る支倉と中にいる治樹を交互に見て固まっていた。
何を考えているかなんて手に取るように分かる表情だ。
「室長はお帰りになりました。さ、仕事しましょう。」
「……俺も帰る…」
「俺らは定時までですよ。」
「……」
「たまった報告書の山、片づけないと。これだけもらいますから残りお願いします。」
書類の山をごっそり自分の机に移す。それを見て悠も大人しくパソコンを起動した。
張り込みだと言って逃げることも考えたのだが治樹にそんな文言通用しないのはよく分かっている。
何故か悠のいる場所いる場所どこにでも彼は現れるのだ。恐らくGPSでもつけられているのだろう。通報したい。
それにこの書類は絶対に今日やらないといけないものだ。そう支倉から言いつけられている。こんなもの多々良にでも投げておけばいいものを、治樹がきちんとやるので付き合わざるを得ない。
とにかくこの仕事を終わらせてどうにか身を隠そう。
黙々と作業をこなす。治樹はこういった事務作業が好きだった。何も考えず時間だけが過ぎる。仕事がないよりよっぽどましだ。
最後の案件に取り掛かるとき、隣を見ると眉間に皺が寄っていた。その顔がおかしくて小さく噴き出した。
笑われたことに驚き、そして気に入らなかったようで睨みつけられる。
「御子柴さん、そんな力入れてたら疲れますよ。」
「うっせぇな…お前もう終わるんだろ。先帰れよ。」
「ダメですよ。俺戸締りしなきゃいけないんで。」
「それくらい俺がやる。」
「御子柴さんじゃ不安だな。ほらほら、手が止まってますよ。」
「……くそ!!何で俺がこんなこと…」
「リラックスしてくださいよ…手伝ってあげますから…」
治樹の手が悠のズボンの中に入る。驚いて手を掴み引き抜こうとしたが、作業を続けるよう言われ両手をキーボードの上に固定された。
やめろ、仕事中は手を出さないって言っただろ、と叫んでみても相手はニヤニヤするだけ。
その間にも治樹の手は悠の陰茎をパンツ越しに優しく愛撫する。普段抱く時には一切触れないくせに。
脳内で報告書に集中したり意識を他に移そうとするのだがすぐに愛撫へ引き摺り戻される。
少しずつ硬さが増してくると悠の口からも我慢出来ない甘い声が漏れてきた。
「んっふぁ…ぁっ…」
「腰揺れてるよ。気持ちいい?大嫌いなやつに扱かれて気持ちいいんだ?」
「や、やめ…っ手出さないって…」
「これはお仕置きだよ。さっき俺一課にさんざん頭下げたんだから。御子柴さんのせいですよ…」
「んっふぅっ…っちょ…離せ…」
先端部分が湿ってきた。先走りがとろりと指につく。パンツの中に手を入れるとそこはもうぐちゃぐちゃになっていた。
イきたい。けれど、足りない。
「すご…俺とセックスした後って自分で抜いてないの?」
「ねぇよ…!!」
「へぇ…あ、もしかして後ろ触らないとイけない…?ここでする?あ、室長の机借りようか?」
「テメェ!…んんっやめろっ…!」
口を開けると声が漏れてしまう。手の甲に歯を立てて我慢しているとぷつりと皮が切れて血が一筋流れてきた。
治樹はその様子と時計を見て陰茎から手を離す。
どろどろになった右手を悠に見せつける。荒い息のままその手と治樹を睨みつけた。
「時間無いんで、続きは後にしましょう。」
「……あと?」
「ええ。今日は俺が御子柴さんを自宅まで送りますので。」
「…勝手に決めんなよ!」
「室長からの命令ですから。」
ぐったりと重い体を起こしてパソコンに向かうも中途半端なやり方のせいで全く落ち着いて打ち込めない。
それを見かねた治樹が代わりに残りの案件も引き受けることになった。
悠は机に突っ伏してカタカタとキーボードで打ち込む後輩を見る。
長身で整った顔をしている後輩。自分の過去を暴いて脅して犯す最低な変態とは誰も想像できないだろう。
そんなことしていないで女と時間を費やせばいいのに。本当に分からない。
殺したいほど憎い。が、ただ唯一体を繋げている時だけ求められていると感じてしまう。
キスも前戯もなし。ただちょっと入り口をほぐして突っ込んで終わり。オナホールと同じ役割だ。花田や昔の客のときもそんな感情あったのだろうか。今となっては思い出せない。
ぼーっと治樹を見ていると仕事が片付いたのだろうか、電源を落としてデスクの上に散らばっていた書類をまとめだした。
「…そんなに物欲しそうな顔で見ないでください。」
「は?ばかじゃねぇの?」
「ほら、行きますよ。」
報告書は?もう送りました。
短い言葉を交わして仕方なく治樹の運転する車に乗り込む。
さすが金持ちの息子だけある。悠は見たことない車種に戸惑った。
後ろの席に座ろうとしたが助手席に乗れと言われしぶしぶ隣に座った。
シートはふかふかで乗り心地抜群だ。きっと外国の高い自動車なのだろう。
「ナビお願いしますね。」
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