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本庁からそう離れていないアパートへ誘導する。
これから自宅でことに及ぶのだろうか。自宅は知られたくなかったがGPSをつけられているならそれもすぐ分かるのだろう。
20分弱で自宅につく。日も落ちて外の街灯だけが唯一の明かりだった。
車はコインパーキングに停め、部屋に向かった。
鍵でドアを開けてすぐにライトをつけ始める。
その行動に少し驚いた治樹だったが、何も言わず後をついていった。
「ほら、早くしろよ。」
「先にシャワー浴びてきてください。」
「……」
お前は、と言いかけたところで口を噤む。
何一緒に入る気になっているのだろう。
汗を流してタオルを巻いて戻った。
クールビズでジャケットではない半袖のシャツをボタン二つ外して治樹はスマホをいじっていた。
こちらに気付くとそれを置いてゆっくり歩み寄る。
まだ恐怖は拭えない。びくっと震える体を両腕で抱きしめる。大丈夫、耐えるだけ、と自身に言い聞かせた。
「あおむけになって。両腕は頭の上に。」
「は?」
いつもとは違う要求に戸惑いを隠せない。早く、と急かされて仕方なく言うとおりにした。
こんな貧相な体の男を抱いて何が楽しいのだろうか。もっと豊満で美しい女を抱いた方が絶対にいいだろうに。
「はい。これで良し。」
「え…?」
ベッドの柵に両手が括りつけられている。余計なことを考えていて反応が遅れた。それを悔いてももう遅い。
「何だよこれ!外せ!」
「大丈夫です。俺のネクタイですから痕はつきませんよ。たぶん。」
「そういう問題じゃない!」
「はいはい。じゃぁ始めますよ。」
何もかもいつもと違う。
いつもセックスするときは後背位なのに、今仰向けにされている。
それに治樹は着衣である。皺になるからと全て脱ぎ捨てるのに。
ローションをたっぷり手に取り濡らした指が悠の中に入ってきた。
そう、ローションだってそんなに使わない。
「ふっ…んっ…」
「女みたく勝手に濡れたら楽なのにね。」
ゆっくりとなじませるように指を挿入し前後に擦る。
ぬるぬるとした感触とごつい指の感覚がぞわぞわと背を駆け巡る。
もう一本増やすと男の一番感じる例のところ付近に指が到達した。
最初は偶然かと思ったがその付近を執拗に攻め立てる。
先走りが治樹の指の方まで流れてきた。
「うわぁすごい。やっぱりここって気持ちいいんだ?」
「あっんんっ!そ、やめっ…!」
「がちがちじゃん。さっき職場でやってる時よりすごいよ。やっぱり御子柴さん、お尻触られないとイけないんだね…」
前立腺をトントンとノックされるとびりびりとした快感が押し寄せてきた。
一度も治樹の前でイったことはない。それがこんな風に無様に果ててしまうのか、なんとか快楽を受け流したくて身をよじってみるのだが雄の方も掴まれ同時に攻められる。
「いやぁっ!あっあっもう、イ…くぅっ!」
腹で受け止めシーツは無事だった。
呼吸を整えとろんと据わった目には涙が浮かんでいる。
まだ気持ちよさが続いているのか後孔はきゅうきゅうと治樹の指を名残惜しそうに食んでいた。
だが無情にも指は引き抜かれ、治樹は身支度を整え帰宅の準備をする。
てっきりこのあとするものと思っていた悠も拍子抜けした。というより自分にだけこんな風にしておいてお前は涼しい顔して帰るのかと文句を言ってやりたい。
結局、ではまた明日。とだけ言い残し出て行った。
「くそ!解け変態!」
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