春夏秋冬~夏~(過激表現あり)

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それから一週間。 治樹は一度も悠を抱かなかった。それに仕事以外の会話も一切しなくなった。 三日経たずに拉致して犯して自分を包囲していたはずなのに。 (いいことじゃねぇか…何気にしてんだ俺…) なんとなく避けられている気がする。 仕事は滞りなく進められているのでいいのだが、何となく落ち着かない。 「悠、お前今夜予定あるか?」 「いや、ねぇけど…」 「そうか!じゃぁ今夜久しぶりにうちに飯食いに来いよ。美子(みこ)のやつがお前に会いたがっててさ。孝輔もお前と遊びたいって聞かなくてね。」 「あ、そう…分かった。」 「じゃぁ連絡しとくわ。お、そうだ、おーい鷹橋!お前も今夜うちに夕飯食いにこないか?」 「は!?おい、あいつは…」 何も知らない上司が治樹に声をかける。 悠が行くことが分かれば絶対に来ない。まぁそれでもいいのだが。 だが悠の予想を裏切り治樹は二つ返事で行くことが決まった。 上司の誘いを断るのは確かに社会人としてあまり相応しくない。そう思ったのだろうか。 二人で支倉の家に向かう途中、お互いに一言も話さなかった。 それどころか目も合わせない。 珍しく悠の方が居た堪れなくなり声をかけようとしたのだが、手元でスマートフォンを操作しているので苛立ってやめた。 どうして自分が気を遣う必要がある。 「悠ちゃん!久しぶりね~体は大丈夫?ちゃんと食べてる?」 「大丈夫だよ美子さん。孝輔は?」 「悠にい!!ねぇねぇゲームやろ!!」 「孝輔!飯が先だろ!」 食事はごく一般的な家庭料理だった。普段家政婦が作るようなわりと贅沢な食事をしている治樹にしてみれば少しあこがれていた味。 両親がいて、子どもがいて。どこにでもある一般家庭。 その一般的なものを欲しても得られない二人が並んで食事をする。 悠は渡された缶ビールをちびちび飲んでいた。酒はあまり好きではない。 それを見て美子はすぐに麦茶を注いだ。 この二人は確かに悠の両親でもあるのだ。 治樹は会話の中であたりさわりのない相槌をうっていた。 食事が終わり、支倉と孝輔、悠はテレビゲームに興じていた。こう見ると本当に親子のように見える。 「鷹橋くん、ごはんお口に合った?ごめんなさいね、豪華なもの作れなくて。」 「いえいえ!とてもおいしかったです。うち、母親がいないので。」 「あら、そうだったの。」 「ええ。俺が中学の頃病気で亡くなりました。だからこういうのすごく久しぶりで…楽しかったです。」 9時をとうにまわり、二人で支倉の家を後にした。 二人ともアルコールが入っているので徒歩で帰る。 「…すごい仲良し家族でしたね。」 「……ああ。」 「…御子柴さんの入る隙、ありませんね。」 普段の茶化しのつもりだった。 支倉を見る目が恋情の籠っている目をしていたから。 いつものように突っかかってくる、そう思っていたのに。 「……そうだな…」 前を歩く悠の表情は読み取れない。 しかしその声色は心なしかトーンが低かった。 「つーか、今日すんの?それとももう、俺に飽きた?」 先を歩く悠の腕を掴む。思わず力がこもってしまった。 痛かったのだろうか、顔が歪む。 「何で……何でそんな顔するくらいなら…」 「…はぁ?いてぇよ離せよ!」 「くそ!気が変わった。今日はアンタを抱きつぶす。」 「…へ?」 無理矢理腕を引っ張って捕まえたタクシーに乗せる。 そのまま悠のアパートへ向かい、運転手に多めの乗車賃を渡してすぐにタクシーをおりた。 怒ってる。どうして治樹が怒るのか見当もつかない。 後ろから怒鳴ってみても全く反応しない。ただ無理矢理に腕を引いている。 シャワー室に押し込められ、乱暴に口を塞がれた。 壁に押し当てられひんやりとした感触にぞくりとする。 何度も角度を変えられては唇を合わせて舌が絡まる。どちらともいえない唾液が口の端からつーっと垂れた。 「んっふっおい、んんっ!はなせよ!鷹橋!!」 右手でシャワーを出して冷水を浴びせるとさすがに驚いたのか、やっと体を離した。 荒い呼吸を整える。治樹は下を向いてこちらを見ようとしない。 「何だよいきなりお前…」 「……ばいいのに…」 「え?」 「あの人のこと、いい加減に諦めろよ!」 あの人?一体誰のことを。ああ、一人の男の顔が浮かんだ。 いつも飄々としていて距離感のない男の顔だ。きゅっと唇を強く噛んだ。 「…想うくらい、いいだろ…!」 「いやだ!!」 「は…?」 「それじゃぁいつまでも俺はあんたに見てもらえない…」 「……はぁ…?」 何泣きそうな顔してんだお前。と悪態をつくつもりだったのだが、思いの外治樹の悲痛な表情に動揺している。 そして、数秒かかってから漸く意図が分かり顔中に熱が集まってきた。 「ねぇ。呼んで。」 「え?」 「もう一回、名前。名字でいいから…」 「…鷹橋…」 「初めて呼ばれた。」 「そう…だっけか…?」 「うん…」 濡れたスーツを脱ぎ捨て、そのままベッドに直行する。 荒々しいキスの嵐に、股間は既に反応してきている。 胸を嬲られるたびに腰が揺れているのが自分でも分かった。 触られる手が熱い。胸の鼓動が速く鼓膜にまで響く。組み敷いている男の顔が雄の顔になっている。 今まで幾度となく体を重ねていても見えなかった相手の顔。今はしっかりとこの瞳に映っていた。 「中、気持ちいい?ここ、御子柴さんのいいところ。覚えておいて。」 「ひっああっん、はぁ、」 「すご、指食いちぎられそうだよ…」 治樹の指が前立腺をこりこりと刺激すると一段と体が跳ね、呼吸が小刻みになってきた。 「んあっ!そ、こっだめ…!」 「んー?何で?こんなに中トロトロにして気持ちいんじゃないの?」 「…から…」 「何?」 「き、もちいから…っ!でちゃ…!」 「イきそう?いいよ、顔隠さないで、ちゃんと俺の顔見てイって。」 顔を隠していた腕を無理矢理どかすと、顔を近付けてきた。手は休めずいいところばかりを刺激してくる。 背けたいのにさせてくれない。 「あ、も、イく、イく!あぁああーーっ!!」 吐き出した精を指ですくってなめてみた。 それを見られて憤慨する悠も愛らしい。 「一人でシてたのかなって。ほら、しばらくヤってなかったでしょ?」 「お前みたいに性欲お化けじゃないからな。」 「ひど。さ、続きしましょ。」 まだ果てて敏感になっている中。その入り口にあてがいゆっくり挿入した。 もう何度も入れている部分。簡単に治樹を飲み込んでいく。体が慣れていることを目の当たりにして真っ赤になる。 「あー…気持ちい…大丈夫?」 「ん、ん…あ…」 中が満たされている。初めて向かい合って体を重ねていることに気付いて再び頬を火照らせた。 相手の顔が見えているということは相手は自分の顔を見ているということになる。 こんな感じているいやらしくだらしない顔を見られたくない。しかし治樹は悠の顔に触れ、愛おしそうに撫でた。 「な、に…?」 「ふふっ…御子柴さんが俺のに感じてくれてるって思って…うれしい。」 「ば、かじゃねぇ…んあ、いきなり、うごくなっ」 「ごめん、でも我慢出来ない…!」 「あ、ま、てって…!おくぅ…あたるからぁ…!」 「奥、あててんの…分かる?気持ちいい?」 必死にコクコクと頷く。最奥の部分をトントン突かれてさっきイったばかりだというのに再びむくむくと大きくなって体を震わせた。 「あっまた、イっちゃ…!」 「いいよ、イってよ…もっと、感じて、俺を。」 悠が果てても律動を止めない。両足をぐいっと持ち上げて深く刺す。 その刺激でまた震わせて少しだけ吐精した。 体を起こし、繋がったまま抱き合うかたちになる。 「あ、はぁ、たかは、し…」 「みこしばさん…好き、好きだよ…」 「…ん…んぁ…」 好きすぎて同化してしまいたい。ぎこちなく絡ませてくる悠の舌を貪った。 下から突き上げるとびくっと体を震わしてきゅっと締め付けられた。 「ん、随分締め付けるじゃん…そんなに良いの…?」 起こした上体をベッドに寝かしつけガンガンと腰を打ち付けた。 「まっそん、な!んぁぁ!あ、はぁ、んんっ!」 色白の首筋に舌を這わせてマーキングを施すと近付けた治樹の首に細い腕が絡みついた。 抱きしめられた感触と耳にかかる色のある吐息。 愛おしさが爆発しそうだ。 最後の律動で中に吐精し、ほとんど意識のない悠の唇にちゅっと軽いキスをした。
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