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Ⅰ , 出会い
青年は全身びしょ濡れで屋敷の扉を叩いた。
何も反応はないが、このままここで雨に打たれ続けるのも嫌だったので、そっと扉を開け中に入る。
外は古びた廃墟のような見た目をしているにも関わらず、中は意外と小奇麗なことに驚いた。
もしかして空き家か?と思っていたが、どうやら違うようだ。
「スミマセン、誰かいませんか」
再度青年が声をあげても何も聞こえず、ただ扉の外で先程より酷くなっている雨風が音をたてて響いていた。
「…やっぱり誰もいないのか?
まぁいいや、雨宿りさせてもらおう」
「…誰?」
「うぉっ!!!」
青年は飛び上がって驚いた。
何故なら、誰もいなかったはずの背後から声が聞こえたからだ。しかも耳元で。
「なっ…、な、オバっ、オバケ…」
「ヒドっ、勝手に人んち入っておいて家主をオバケ呼ばわり?まぁ実際似たようなもんだけど」
「お、俺、声かけました…、だけど何も反応なくて…」
「えー、うそ?聞こえなかったー。こんなに激しく雨降ってたら聞こえないかぁ」
「あの…、今晩だけでいいので、ここに居させてもらえませんか」
「え、ヤダ☆」
「…は?」
とても良い笑顔できっぱりと言い放った目の前の男に、青年は思わずイラッときてしまった。
「あれー、いいのかなー、そんな態度とって。君、お願いしてる立場なの忘れてるー?」
「……」
何だコイツは。すごくむかつく。
出会って数分も経ってないが、コイツが非常に面倒くさい奴だということを悟ってしまった。
(なんか面倒なのに引っかかった…)
普段だったら野宿をするが、今夜は雨風が酷いので少し屋根を貸してもらおうと思ってただけなのに。
「ウソウソ、そんな怖い顔で睨まないでよー。
いいよ、うち泊まらせてあげる。おいで」
そう言って男は、青年の着ていたびしょ濡れの ローブを一瞬で脱がせ、スタスタと屋敷の中に歩いていってしまった。
「あ、ちょ…」
面倒くさそうだけど、一日だけだし、まぁいいか。
と、青年はしぶしぶ男の後をついていった。
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