跳べないバスケ部員

1/1
前へ
/10ページ
次へ

跳べないバスケ部員

7月の上旬柴崎は帰ってきた。 治療とリハビリを終え、赤い髪をして。 春、あいつは事故に遭った。 子供のふらついた自転車に手を伸ばした途端、 センターラインを超えた車が向かってきた。 幸い昼間だったこと、スクールゾーンだったこと、 幸い車のスピードは緩めだった。 それでもあいつは、無傷でいることはできなかった。 あのジャージの右足には20センチ位の傷がある。 治療を受け、リハビリに励んだ。元々スポーツをしていた体だ。 周囲にも気を使ったのかもしれない。 ずいぶんと早く、そして髪の毛の色を変えて帰ってきた。 日常生活は問題ない。体育の授業は教師が調整している。 そう。ただ激しい運動ができない。 柴崎は2度とバスケができない体で帰ってきた。 だから皆、一線を引いてしまっているのがわかる。 そんなことは柴崎が1番わかっていた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加