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My brightest star (私の輝ける星)
「宝物?」
「先輩ともうインターハイもウインターカップも目指せない。
もうメダルなんか飾っていても意味がない」
柴崎は叫び根屋の肩を掴む。自分よりずいぶん細い肩だった。
そして根屋を引き寄せ抱きしめる。
思ったより自分よりずいぶん細い体。ずっと腕の中に収めたかった体。
「うおっ」
肩をつかまれた時に根屋はバランスを崩し柴崎の腕を掴む。
「ずっと一緒にバスケしていたかった。同じコートに入りたかった。
レギュラーになりたかった。でももう先輩と一緒に進めない」
根屋は自分より大きな背中をポンポンと叩き、
「俺だってお前と全国目指したかったよ。前にキャプテンの新田とも
話したけれどお前体格いいからさ、
パワーフォワードあたりに育てればレギュラーになるってさ。
だからさ、無理矢理バスケ捨てるなよ。知識は十分なんだ」
「根屋先輩。俺から逃げて。あと半年逃げて」
「ん?」
柴崎の唇が根屋の唇に触れる。
「本当にウインターカップ目指したかった。
コートが無理ならベンチからでも先輩を見ていたかった。
俺の大切なたからものなんです」
そう言うと柴崎は根屋の唇を奪う。
『ん?んん?』
さっきよりも唇が重なり、自分の唇が熱を持っていくのを根屋はしっかり感じていた。
「足、痛むんで見送りは玄関まででいいですか」
ゆっくり柴崎は唇を離し、抱きしめていた腕をゆるめた。
「今日は急に邪魔して悪かったな。足、大事にしろよ?」
玄関先で柴崎に声をかける。
「根屋先輩。今までご指導ありがとうございました。
短い時間でしたが、大変充実した時間でした」
玄関で柴崎は深々と頭を下げ根屋を見送った。
『あいつ俺にキスしたよな?あいつのあきらめる2つのたからものって
バスケと俺?半年逃げるってなんだ?あいつ俺のこと好きなのか。
じゃあ、なんで俺は逃げるんだ』
根屋は帰路につく。解答のわからないまま。
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