雨のち恋日和

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ビニール傘の一件は、自覚している以上にショックだったようで、私はいつにもましてぼんやりとしていた。 電車が動き出したことも、次の駅に到着したことも、全く意識していなかったところに、扉が開く音で我に返った。 (ああ、あの人の駅じゃん……) そう思って扉の方を見ると、ちょうどあの人が乗ってくるところだった──前髪から雨を滴らせて。
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