雨のち恋日和

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周囲の乗客が(うわあ……)と気の毒がったのが、なんとなく伝わってきた。 池に飛び込んだようなずぶ濡れというわけではないけれど、あの大粒の雨に打たれただろうと見当がつくくらいの濡れ方だった。 (え、どうしよう……) 奇遇なことに──正確に言うなら私がぼけていたために──私は傘を2本持っている。 目の前のこの人は明らかに傘を持っていない。 そして、外は相変わらずの雨。 私はこのビニール傘が好きではないし、今後使うこともないと思う。 だからこの傘をあげてしまっても何の問題はない──けれど。
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