雨のち恋日和

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目下の問題は先ほどの一件だった。 別に何か下心があってあんな行動に出たわけではないとはいえ、恥ずかしくてもう顔向けできない気がする。 あの車両にだって、もう乗れない。 私は音を立てないように意識して、大きくため息をついた。 (さよなら私の目の保養……!) 私は地下鉄に揺られながら、頭の中で勝手に感傷的な別れを告げた。 雨の日だし、傘が役に立ったことは間違いないと思うから、最後に少しだけあの人の役に立てたんだ、と自分を慰めながら、私は職場に向かった。 仕事は待ってくれない。
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