雨のち恋日和

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他の人の通行の邪魔にならないように、私たちはとりあえず端に寄った。 「あのときは助かりました。遅まきながら、本当にありがとうございました。ただ……」 目の前の「あの人」はいったん言葉を切る。 「まいったな……こんなところで会えると思ってなかったから持ってこなかった」 傘のことだろう。私は首を振った。 「いいんです、あれ。差し上げます。あの、ご迷惑でなければ」 私はうかがうように少し顔を上げる。 一方的に傘なんて押し付けて、やっぱり迷惑だっただろうか。
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