雨のち恋日和

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「ありがとうございます。……マツモトヒロナオ、と申します」 スマホから顔を上げて彼が言った。 ちょうど、私のスマホの画面にはその名前が表示されている。 私の中で、「マツモトヒロナオ」が「松本浩尚」に変換された。 (あ、私も名乗った方がいいのか……) そう思ったのだけれど、彼──松本さんの方が早かった。 「和泉由佳さん、でお間違いありませんか?」 私はうなずく。 彼の声で自分の名前──それもフルネーム──が発音されるのを聞くというのは、なんとなく不思議な感じだった。
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