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「和泉さん。改めてこちらからご連絡させていただきます。お引き止めしてすみませんでした。では──」
そう言うと、松本さんは軽く会釈して去っていった。
それを私は半ば呆然として見送る。
左手に持ったままのスマホを改めて確認してみた。
(え、ほんとにあの人と連絡先なんか交換しちゃったの……?)
何このドラマみたいな偶然、と思う。
けれど意外にも、特別感激もなければ嬉しいとも思わなかった。
それよりも、こんな気の抜けた格好で会ってしまったことのショックの方が断然大きい。
私は小さく息をつき、スマホをバッグに戻す。
そしてロビーを横切り、図書館閲覧室の扉を押し開けた。
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