11章「彼女の笑顔が一番美しい」

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隣で理穂が、「裕也さん、早いですよ。まだこれからじゃないですか」なんて言っていた。 そんな理穂も少し涙していた。やっぱり自分の結婚式ともなると、堪えることなんてできなかった。 「それでは、新婦様によるスピーチを、よろしくお願いします」 いよいよ新婦からによる、両親への手紙のシーンだ。 先に言っておこう。俺は絶対に泣く。いや、既にもう泣いている。 理穂のご両親も必死に堪えているが、娘が手紙を読んでくれるというだけで、既に泣きそうである。 うちの親も同じ表情をしていた。会場中、どこを見渡しても、皆同じ顔をしていた。 今日から俺達は晴れて夫婦となり、新しい第二の人生がスタートした。 これまで親には育ててきてもらった恩があり、たくさん感謝の言葉を伝えたい。 理穂は泣きながら、ご両親に感謝の想いを伝えていた。 理穂の想いに、俺の心が突き動かされて。気がついたら、俺は号泣していた。 理穂のスピーチも終わり、披露宴も無事に終了した。あとは友人達と二次会をやるだけだ。 俺達はラフな格好に着替え、二次会へと足を運んだ。 ずっとタキシードを着ていたせいか、ラフな格好になると、心が安らいだ。 「ウェディングドレスも、披露宴の時に着ていたドレスも良かったけど、今の格好も可愛いよ」 「ありがとうございます。裕也さんもタキシード姿、似合ってて素敵でしたよ。 もちろん、今の格好も素敵ですけどね…」 お互いにお互いを褒め合うという、恥ずかしい状況になってしまった。 二次会の会場に着くまで、無言で手を繋いで歩いた。 「会場に着いたね」 「ですね」 「扉開けるよ」 「はい。お願いします…」
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