11章「彼女の笑顔が一番美しい」

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会場の扉を開けると、大勢の友達が俺達が到着するのを待ってくれていた。 嬉しさのあまり思わず、また涙が出てしまった。 「新郎、今日はよく泣くな」 茶化されてしまった。今日はその茶化しでさえも、嬉しく感じてしまう。 そんな茶化しはすぐに終わり、披露宴とは違い、賑やかなパーティーが始まった。 俺達も思いっきり楽しみ、料理とお酒が進んだ。 「お前が羨ましいよ。俺の奥さんなんて、結婚した時は可愛かったのに、結婚した途端、怖くなって。もう嫁からお母さんになったよ」 久しぶりに再会した友人が、家庭の愚痴を零した。 今日は祝いの席でもあるので、なるべく愚痴は聞きたくなかったが、酔っていたのと再会の嬉しさもあり、話を聞くことにした。 「お前ん家もか。俺ん家もさ、結婚したての頃は、あなた…なんて可愛く甘えてくれてたのにさ、今じゃ、お父さん掃除の邪魔…とか言ってくるんだぜ」 既婚者メンバーが、口を揃えて嫁さんがいないことをいいことに、愚痴を零し始めた。 打って変わって未婚メンバーは、「結婚しているだけいいよな…」と、不満を漏らしてた。 「岸谷、新婚生活はいいぞ?今のうちだけだからな。とことん楽しんでおけ」 再三、釘を刺された。既婚者メンバーは全員、首を縦に頷いていた。 なんだか俺にはまだ想像できなかった。だって、今は理穂の可愛い姿しか想像できないから。
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