11章「彼女の笑顔が一番美しい」

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それから、永遠に愚痴が続いたため、上手くその場を切り抜けるために、適当に相槌を打って、「トイレに行く」と嘘をついて抜けた。 だって、今夜は新婚初夜だ。理穂と少しでも長く一緒に居たいと思った。 なので、トイレに行くフリをしつつ、理穂が居る方へと向かい、そっと腕を掴み、耳打ちした。 「理穂、早くベッドに行こう」 すると、理穂の顔と耳が真っ赤になった。 それを見ていた理穂の友人達は、顔をニヤニヤさせていた。 「理穂、私達のことは気にしないで大丈夫だからね?」 「たくさん楽しんでね。今夜は初夜なわけだし」 皆のからかいに、理穂の顔は更に真っ赤になっ た。 「もう!変なからかい止めてよ。 皆が意地悪なので、お先に失礼します」 俺達は早々に二次会を抜けて、自分達が泊まるホテルの部屋へと向かった。            * ホテルの部屋へと到着…。今から初夜を迎える。 初夜…とは言いつつも、散々してきたので、今更何を緊張しているんだと思うが、でも、結婚して初めての夜は今日しかない。 「柄にもなく緊張してる。これが初夜なんだって思うと、変に力が入っちゃってさ。カッコ悪いよな、俺…」 素敵な夜にしたかった。彼女が蕩けるような、熱い夜に…。 なかなか漫画やドラマのようには上手くいかない。 分かってはいても、ついカッコつけたくなってしまうのであった。 「もっと上手くリードして、スマートに、甘い夜にしたかったのに、そんな余裕すらない。今日は俺、上手くできないと思う」 抑えきれそうにない。次第に焦りが増し、どんどん余裕をなくしていく。 「裕也さんは、カッコ悪くなんかないですよ」 理穂が優しく俺を抱きしめてくれた。 理穂の温もりにより、少しずつ落ち着きを取り戻し始めた。 「理穂、ありがとう。もう大丈夫。理穂のお陰で緊張が解けました」 「それならよかったです」 「今夜は寝かさないから、覚悟しておけよ」 左手の薬指を見て、理穂が俺の奥さんになったのだと、実感することができた。 まさか、俺にこんなに強い独占欲があったなんて、知らなかった…。
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