空いた穴には幸せを詰めて

11/15
前へ
/15ページ
次へ
「だってそのお友だちのことが好きだから、喜びたいんでしょう。喜びたいのに戸惑ってしまったから、そんな自分が嫌になったんじゃない?」 (そうだ)  おめでとうと思った。すごいと思った。頑張れと思った。それは間違いなく本当だ。  でも今まで一緒にいた自分は、こんなんでいいのかと思った。将来なんて予想がつかない。具体的なイメージがない。それが悪いことだとは思わなかったが、それをしている昇平を知って、自分がだめなんじゃないかと思った。祝いの言葉を出すべき時に、すぐにそんなことを考えた自分は、もっと嫌なやつだと思った。 (でも、昇平だったから)  祝福も応援も比較も全部。これが他人だったらきっと、戸惑うだけ強くは思わない。おばあさんが言ったようには、恥ずかしくてその正体は素直に言葉にできないけど。 「大丈夫よ」  するすると絡まった糸をほどいていく言葉。 「まだ(・・)、言えていないだけなんでしょう」 「……はい」  そうしたい。  でも何と切り出したらいいのか。  望むのもおかしいが、それこそ喧嘩でもしていれば堂々と謝れる。お互いにどう思って何を考えているのかそれなりに分かって、何と言うのがいいのか想像できる。  でも何も話していないから、きっかけも見つけられないでいる。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加