4人が本棚に入れています
本棚に追加
「何て言って会ったらいいか、ずっと分からなくて」
「春休みだものねえ」
こんなことまで聞いて、図々しいとは思った。でもこのきっかけまで見逃したくはなかった。
それでも視線は合わせられない俺に、おばあさんの優しく笑う気配が聞こえる。
「よくおじいさんがね、私の好きなお饅頭を買って来てくれたの」
視界の端で、おじいさんが照れ臭そうにはにかんだ。「いいことがあった時とか、謝る前とか。何か話したい時にね」
「きっかけに、ですか?」
「そうよ」
「そう、ですか」
「ええ」
うなずいたおばあさんに、ありがとうございますと頭を下げた。
「由利、帰ろう」
「はーい」
素直に手をあげた由利と挨拶をして、今度は二人で来た道を戻る。
最初のコメントを投稿しよう!