空いた穴には幸せを詰めて

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「ギリギリセーフでしょ」  はい由利ちゃんどうぞ。昇平から渡された袋ををのぞき込んだ由利が歓声をあげた。ドーナツだというのは本当らしい。 「そんな騙されやすかったっけ」 「今日じゃなかったら信じてない」 「今日こそ信じちゃだめでしょ」 「色々あったんだよ」 「まあ、エイプリルフールだからね」  そういう問題じゃないんだ。いや、もしかしたらそういう問題なのだろうか。  思わず由利を見ると、ただただご機嫌な様子。きっと○○びよりなんてもう、どこかに飛んでいってしまっただろう。 「――ありがとう」 「どういたしまして」  昇平も由利を見て、少し目じりを下げた。  自然二人とも視線を落とす格好となり、ふ、と沈黙が落ちる。  好きなものは用意してないし、むしろもらってしまったけど。 「あのさ――」  でも言いたいことはもう、分かってるんだ。伝えて聞こう。甘いドーナツを食べながら、二人でゆっくり、話をしよう。
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