空いた穴には幸せを詰めて

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「ここで言うびより(・・・)っていうのは、ちょうどいい天気ってことだ。その前につく行事や行動をするのに適した天気。だからまるまるびよりっていうのは」 「まるまるするのにいい天気!」  うーん。 「そうだな」 そういうことにしておこう。  俺の心中には気づかず、由利はうんうんとうなずいた。  こっそりほっとして似非講義を終了し、冷蔵庫から納豆と卵を出す。インスタントの味噌汁を見つけて電気ケトルのスイッチを入れて、冷凍ご飯はレンジへ。  庭に出た由利を一応気にしつつ、情報番組を眺めながらご飯を食べる。歯を磨いて一息ついた時には、平和な休日パターンに突入していた。  入学前に出された高校の課題は終わっている。くせでポケットに入れたスマートフォンを出すと、画面が真っ黒であることを確認してしまった。 (分かってる)  誰からも連絡はない。その事実よりも確認してしまったことが嫌になって、スマートフォンは机に伏せた。 「見てー!」  庭へ出られるガラス扉を数十センチ開けて、由利が顔を出した。その両腕にはまるまるとした物体が抱えられている。
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