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「みんなまるまるだね」
車の下にいる野良猫、犬小屋の前で寝ている犬、電線に止まっている雀。
全員見事にまるまるとしている。
絶対何かがおかしい。
何かっていうか主に体形が。
しかしすれ違った小学生もご老人も、買い物袋を下げた女性も、何一つ変わらない様子で歩いていく。由利と俺にだけこう見えているのか、その他大勢の頭がおかしくなっているのか。
ニュースになっていないかと検索しようとして、スマートフォンを忘れたことに気がついた。
(まあ、いいか)
できれば見たくなかったのだ。
「つかれた?」
思わずついたため息を由利に拾われる。
こっちの言うことは聞かないくせに、聞かなくていいことは聞いている。首を振って行こうとうながすと、二、三メートル先でみけが立ち止まっていた。
「おばーちゃん、みけのことだっこできないかなー」
由利は眉をひそめた。
そうか、ここがみけの家だ。
「みけね、ちょっと重かったの」
ちょっとではない。見立て、倍以上はある。由利が抱きあげていたから無理ではないだろうが、長時間はつらいだろう。
由利はみけの隣にしゃがみこむと、内緒話を始めた。
「おにーちゃん、どうしよう」
双方にしか分からないやりとりのあと、由利は俺を振り仰いだ。
「みけ、やっぱりまるまるだからおうちに帰れないんだって」
それは俺に言われてもどうしようもない。まるまるびよりだと言い出したのは自分だろう。
「ああ」
そうか、思いついた。
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