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「まるまるびよりは終わりにしよう」
「おわり?」
聞き返してくる由利に大きくうなずく。
「おしまいにしよう。ほら、まるまるびよりはおしまい」
リピートアフタミー。
「……うーん」
そう簡単にはいかなかった。
何かが気に入らないようだ。言い出しっぺが言えば終わるかもしれない、と馬鹿みたいな可能性にかけてみようと思ったのに。
「じゃあね、れいれいびより!」
うん、そういうことが言いたかったんじゃない。代替案を出してほしかったわけじゃないんだ。
思わずため息をつくと、足元でにゃあと鳴く物体。
「……みけ」
お前、戻ってんじゃん。
顔の高さまで抱き上げてみたが、体形はすっかり元通り。
「わあ。よかったねー」
由利は両手を高々とあげる。
よかったねっていうかこれじゃあまるで本当に、由利がこの現象を起こしてるみたいだけど。そこんとこ本人は分かっているのだろうか。
「行こー!」
由利の号令でみけが俺の腕から脱出し、そろって敷地に入っていく。慌てて追いかけると、奥まった玄関先におばあさんがしゃがみ込んでいた。
「あらまあ、こんにちは」
「こんにちはー!」
「すみません勝手に」
どうやら鉢植えの手入れをしていたようで、振り返った顔は朗らかに笑った。
「にゃあ」
「あら、みけ。お邪魔してしまったの?」
「おじゃまじゃないよー」
「由利。むしろ遊んでもらってて」
そうなのと笑いながら立ち上がったおばあさんは、ふと動きを止めた。
「あらまあ。おじいさんまで」
「え?」
振り返ると、優しそうな笑みを浮かべた老人が一人。
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