8話

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8話

「今日はその汚れた体を綺麗にしてもらいます!!」 エリュシエルの怒声が封印の間に響く。 胸を張って、色々な道具を持っているエリュシエル。 こうなったとき、エリュシエルはかなり我が強い。 恐らく何をいっても聞く耳を持たないことをパンドラは理解していた。 「私は別にかまわないけど?」 「私が構うんです!!」 ノラリクラリとエリュシエルの猛攻を躱そうとしても、 エリュシエルはすぐに噛みついてくる。 この少女に能力では圧倒的有利を誇っているパンドラもこういうときばかりは 形なしだった。 深いため息をついて、過去を振り返る。 まだ振り返るという程昔ではない、最近のこと。 エリュシエルは自分とあってすぐにこの部屋を掃除し始めたことを思い出し、 パンドラは笑みを浮かべる。 「大体、パンドラさんはせっかく綺麗な容姿をしているんだから、 もっと綺麗にしてください」 頰を赤く染めながら、体を洗うグッズを差し出すエリュシエル。 長い封印という年月はパンドラの感覚を麻痺させるには十分に長い期間だった。 今じゃ、汚れた体にもずいぶん慣れてしまった。 元々、億劫になりやすい性格だ。その長い期間が億劫に更に輪をかけさせてしまった。 めんどくさいと心底思う。 しかし、最近ではこの少女が目の前でわめき立てるのが少し楽しくもある。 めんどくさい事案。そんなときにふと面白いアイディアが湧く。 ちょっとしたいたずら心。 「そんなにいうならエリュシエル、あなたが私の体を洗ってくれない?」 「!?な、な、な…なんで私がパンドラさんの体を洗うんですか!!!」 真っ赤な顔をして、エリュシエルが大声をあげる。 あまりの動揺から声が震えて、挙動不審な動きをしている。 「だって…私は別にこのままでも構わないんだもの。 皮の拘束具と比べれば今はずいぶん快適だし、心地がいいわ。 体を洗う気にも特になれないの。でもエリュシエルが洗ってくれるなら、 素直に洗われてもいいわ」 そのパンドラのセリフに顔を真っ赤に染めて、その場で何度も考えをまとめる。 きっと頭の中ではあ~でもない、こうでもないと考えを必死にまとめているのだろう。 「その…えっと…あまり私の方を見ないならという条件で…」 顔を真っ赤に染め、ポツリ、ポツリと言葉を紡ぐエリュシエル。 「それは本来私がいうべきセリフよ?」 エリュシエルの提案に冷静に突っ込むパンドラ。 「だ…大体!!パンドラさんが悪いんです!!そんな変な提案をするから…!! もっと恥じらいというものを持ってください!!今だって、その裸ですし…」 パンドラもひょっとすると対等な生き物同士だったら恥じらいをもつかもしれないが、 一瞬で踏み潰す相手に恥じらいもなにもあったものではない。 「いうなら昔封印した連中にいうことね。もっとも今じゃ全員老齢で死んでるでしょうけど」 「私が服を持ってきても拒否したくせに…」 確かに昔封印した人が裸でしたのは事実だ。 しかし、服をもってきても着なかったのはパンドラ自身である。 「年をとると最近のことは記憶に残らなくてダメね」 とパンドラは鼻で笑う。 「では始めましょうか?聖女様?」 パンドラがジッと見つめると、エリュシエルは居心地悪そうに、目を背け、コクンと頷く。 そして、エリュシエルは震える手でパンドラの体に手を伸ばす。 タオルを水で濡らし、少しずつ体を拭いていく。 まずは首筋から丁寧に拭いていき、肩、そして胸を通る。 「私の胸柔らかい?」 タオルがちょうど胸を拭くタイミングで声を掛ける。 「そんなの拭いてるだけなのに意識してるわけないじゃないですか…」 だがそんなのは嘘だということがパンドラには手に取るように分かった。 特別な能力を使わずともチラチラと視線を感じるのだから当たり前だ。 恥ずかしがりながらも何度も見てしまうその姿は、 エリュシエルがむっつりすけべであることを証明している。 「あ…!」 ちょうどいいタイミングで艶やかそうな声をあげるパンドラ。 その声を聞いて面白いほど、体をビクッと反応させるエリュシエル。 いちいちウブな反応をするエリュシエルが非常に面白い。 「そ…そ…そんな声あげるようなことやってないでしょう!!! からかうのもいい加減にしてください!!!」 余裕が少しずつなくなっていき、言葉の抑揚に遠慮というものが少なくなっていく。 体を拭いて汚れたタオルを水で軽く洗い、水をしぼってまた丁寧に拭いていく。 何しろ長年の汚れだ。この程度でそうそう綺麗になるわけもない。 全身を拭き終わる。 「ふ…拭き終わりましたよ!!」 「まだ…ここ洗ってないわよ?」 そういって、パンドラが足を軽く広げる。 「な…な…な…」 思考回路が回っていないのかエリュシエルは満足にものをいうことさえできない。 エリュシエルの手がパンドラの股間に近づく。 「もし…私のあそこが濡れてたら…嬉しい?」 パンドラがエリュシエルの耳元で囁く。 それがエリュシエルの限界だった。 ボカン!!! 「いった!!?ぶったわね!?この災厄と呼ばれた私を!!?しかもグーで!!!」 「な…な!!いい加減にしてください!!怒りますよ!!!!!!?」 ワナワナと震える手でタオルを握りしめ、エリュシエルは怒鳴った。 顔は火がつくような真っ赤になっており、口もアワアワと上下に動いている。 完全に我を失うほどに、エリュシエルは狼狽していた。 その姿を見て少しからかいすぎたかとパンドラは反省する。 「ちょっとした冗談じゃない。一つ願い事を聞いてあげるから許して?」 顔を背けて、しばらく逡巡したエリュシエルが小さく口を開く。 「じゃ…じゃあこれからは目のやり場に困るので服を着てください…」 消え入りそうな声をだすエリュシエル。 「わかったわ。わかったから続きお願い?」 コクリと頷き、無言のままエリュシエルはパンドラの体を磨いた。 ドキドキと胸を高鳴らせながら…。c7e2b88d-a4a9-4dd9-a78c-b57c1dff52c2
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