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 朝が来るまで、柴田はリビングで一人震えていた。テーブルに置いた携帯に着信があった。柴田は携帯を掴み取り、耳に押し付けた。 「まだ終わってない」桜木は、開口一番に言った。「でも、大丈夫、何か方法がある筈だから」 「もういいよ」柴田は言った。「これ以上、何をすればいいか分からない」 「諦めないで」  怒鳴るように桜木は言った。 「大丈夫だから」と、柴田は言った。幼馴染の優しさに胸が痛くなった。「俺は、大丈夫だよ。南にも、迷惑をかけてごめんね」 「そんなこと言わないで、きっとどこかに手掛かりが」桜木はそう言い、一瞬間を置いてから、言葉を重ねた。「ねえ、引っ越し当日、部屋で何か見つけてない?何か、小さな物を」 「部屋で?」柴田はロフトで見つけた鍵を思い出した。「ロッカーの鍵があったよ」 「鍵の画像送って」 「分かった」  柴田はメールで画像を送り、自分もネットを検索して鍵の出所を探した。  すると個人のブログが一件ヒットした。鍵はゴルフ場のロッカーキーだった。郁子のブログにもゴルフをする姿があった。  柴田はサンダルをつっかけ、外に飛び出した。
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