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 夜の十時を過ぎ、柴田は就寝する為にロストに上がった。布団に横になり、天井を見上げる。  そこにあるのは四角い天窓。月明りに照らされたエンパイアステートビルが白い亡霊のように浮かび上がっていた。  布団に包まり、うつらうつらしていた。その時だった。額に生暖かい何かが落ちてきた。それはぽたり、ぽたり、一定の間隔で額に触れ、ナメクジが這うようにゆっくりゆっくり首筋を流れていった。  柴田は飛び起き、電気を付け、慌てて首筋に手をやった。指先に残るのは皮脂と汗だけ。枕元を見ても濡れたような痕は見当たらなかった。  夢でも見たのだろうか?それにしてはリアルな夢だった。侵入して来た誰かに、首筋を舐められたかのような。  柴田は電気を消し、布団に潜り込んだ。  目を瞑って暫くすると、また水滴のような音が耳元で響いた。ぽたり、ぽたり、ぽたり。その時、何故だか蛍光灯に衝突する甲虫を思い出した。  時刻は夜の二時だった。
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