プリンシパル

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でもまあ、それもそろそろ卒業して良いのではないか。娘がもっと大きくなって、そして親の決めたルールを自分の力で超えていけるようになるまで、それほど時間は残されてはいないだろう。 それまでの間、私は娘を甘かすことが出来る時間を大切にしたいと思った。 さて、そろそろ出かける準備をしなければならない。私は上着を取りに書斎に入った。書斎と言っても、トイレの横の、4畳半くらいのスペースだ。どうしても必要だと私が妻にせがんだので、妥協として与えられたのがその小部屋であった。家庭の中の、ほんの僅かな隠れ家が、私には必要であった。例えば、妻に隠れて買ったものを一時的に置いておくのには丁度良い。実は、先週秘密裏に買ったゴルフクラブを、机の下に隠してある。値段は、ちょっと気軽には言えない額である。我が家の経済状況は決して良好ではない。娘の教育費を考えれば、いくら切り詰めてもまだ足りないくらいである。それでもクラブを買ってしまったのは、誘惑に負けたと言う他ない。 私は明かりも点けずに上着を取ると、制服姿に着替えた娘の待つ玄関に向かった。
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