何年目?

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私は一旦寝室に戻って、パジャマを脱ぎ、お遊戯会に着ていった服を着直した。謝るなら、キチンとした格好の方が良いだろう。万一殺されるなら、それはそれでキチンとした格好が良いだろう。 私は着替えると、姿見で自分の青ざめた顔を見る。いやいや、これでは誠意が感じられない。 私は思い直して、今度はスーツに着替える。 いや、スーツ姿で撲殺されていては、不自然ではないか? いや、そもそも撲殺されるくらいなら。 私はまた思い直して、スウェットに着替える。 殺されるくらいなら、このまま逃げた方がマシだ。 いやいや、でも...。私の脳裏に幸せだった家庭の姿が浮かぶ。笑っている妻と、笑っている娘と、笑っている自分。凡庸な幸せなイメージが強力に頭の中を支配する。
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