小説家を夢みた日

1/11
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
僕はある投稿サイトで小説を書いている。将来小説家になりたいと思っているからである。原稿用紙に書いて月刊誌などの新人賞に応募する事も考えたが、投稿サイトを利用した方が読者の方の意見なども聞けるし、読者数も把握出来るので、主としてこの方法を選択しているのだ。 僕が小説を書き始めたのが去年の夏の初めの事なので、そろそろ1年が経とうとしている。 現在、投稿した小説の数は全部で10作品、全て短編小説で平均して1万文字位なのでそればかりに集中してしまい、勉強を疎かにしている訳でもない。小説家になりたいが大学位卒業しなくてはいけないと思っている。 この前その話を親友の海斗に言ったらバカにして笑われた。梅雨のジメジメした季節、学校が終わった後、帰りの電車の中の事だ。 「小説家なんかで生活が成り経つ訳がないじゃないか。収入だって安定して貰える保証なんかないんだぞ。ちゃんと決まった給料が貰える職業の方がいいに決まってるよ」 そうかな。そんな事はないと思う。海斗には夢がないんだ。 「小説家だって、毎日コツコツ書いていれば収入に問題無いと思うよ。それに賞を取れば大きな利益が得られる時だってあると思うんだ。僕は夢を諦める気にはならないからね」 「優真はのん気だな。家が金持ちだからかな」 海斗がピシャリと言う。 「金持ちは関係ないよ。僕は小説を書いている時が一番幸せなんだ」 議論は尽きる事無く、僕が降りなければならない駅に着いた。 「今度、海斗も僕の小説読んでよ」 そう言った後、電車を降りる為ドアに近づく。 「解った。解った。暇が出来たらな」 僕はホームに降り立つと ああ。きっと海斗は小説読まないだろうな。と思った。海斗は僕のペンネームだって知らないのだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!