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序章 告白の行方
陽が落ちた襟裳岬の灯台で、私達は対峙している。
吹き付ける風がうねりを上げて笛のような不気味な音を鳴らす。一定の速度を保ったまま、ライトが頭上を過っては一瞬の暗闇を連れてくる。
初恋の彼がどんなに傷付いていたとしても、私がその傷を埋め合わせるために自分を偽ってまで好きなようにされるなんて、そんなのはイヤ。
十年前、私達は本当の兄妹のような濃厚な時間を共に過ごした。
だけど、その幸せを突然断ち切ったのは彼だ。置き去りにされた私の十年は、彼と出会う前の孤独の何十倍も深く濃く…。でも、その暗闇の中でさえ、消えなかったあなたへの想い。
会いたくて、恋しくて、諦められなかった私の初恋。
だからこそ、今。私の前に再び戻ってきた彼に、言わなくちゃいけないことがある。
それで嫌われたとしても、私はそんな自分を曲げられない。
晴馬が、私の顔を今にも泣き出しそうな目で見詰めた……。
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