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 彼女が来たのは、二十時を過ぎた頃だった。  ちょうど、コンビニで買った味気ない弁当を食べ終え、ゴミ箱に放り込み、ビールのプルタブを起こしたところで、来客を告げる無機質な音が静かな部屋に響いた。  ビールをじっとりと睨み、一口も飲まずにテーブルに置く。  疲れきった身体を上げてモニターを見ると、女がいた。映し出された懐かしい顔に、思わず首を捻る。なぜ、彼女がここに。そう考えていると、もう一度、急かすようにチャイムが鳴る。映し出された顔は、どこか緊張しているようにも見えた。  少しだけ、出るか否か考える。  もし、昔のよしみでと興味のないオーガニックやらのセールスや、胡散臭い宗教めいた販売の勧誘だったら? どちらにしても面倒くさいことこの上ないが、出ないと言う選択肢はもう既に二重に線を引き、消されていた。  この時間に尋ねてくるということは、今出ずとも明日にでも彼女は来ることだろう。一度決めたら決心が鈍ることはない彼女のことだ、そうに違いないと思うと、ここで対応していた方が幾分か気が楽な気がした。  そのまま玄関に行き、鍵を開けて出る。  彼女──志野崎アユミはパッと顔を上げた。 「アユミ?」  そう声をかけると、アユミはホッとしたような、しかしどこか落胆した顔で目尻を下げ、ぎこちなく笑った。
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