第3章 山羊座

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 俺、天野(あまの)(しゅん)は刹那に頼まれて天体観測に行った場所で黒髪の少女 星川(ほしかわ)(そら)に出会った。  そして、俺はどうやらこの少女。空の大事な儀式を邪魔したらしい。しかも、とても大事なカードをばらまいてしまった。  ――――結果、俺は空と共にばらまかれたカード集めることになってしまった……。  しかし、今日俺が寝不足なのは全くの別件だ。  俺は、昔から『幽霊を視ること』が出来る。そのことがきっかけで昔から幽霊たちの願いや手助けなどをしており、今ではカード探しと平行している訳なのだが……。  昨日の件は、幽霊からの頼み事だった。  基本的に願いを言ってくるのは亡くなった場所に行きたいとか家族に会いたい……がほとんどだ。  しかし、ごくたまにいつものテイストと違う頼みごとを言ってくる幽霊もたまーにいる。察しのいい人はそこで分かると思う。  実は昨日。幽霊が俺に頼んできたのは……まさかの『将棋で負けたい』だったのだ。  俺自身、将棋を全くしたことがない……というわけではなかった。だが、俺は少しかじっただけのいわば『素人に毛が生えた程度』の実力しかない。  対して相手は、後で知ったことだが元プロ棋士の幽霊だ。  しかも、若くして亡くなったらしくニュースや特集も組まれるくらいの人物だった……らしい。  ――そんな相手に俺が勝つのは正直、厳しい……というより無理難題な話だ。  ただ、本当になんでうっかり一回は勝てるかも……と思ってしまったのか……それが大きな間違いだと気が付かなかったのだろうか。  今ならその時の俺に一発げんこつを入れてやりたい気分だ。  最初は『ビギナーズラック』を期待したが、勝負数が十を超えた辺りで、俺は「あっ、これは無理だな」と気がついた。  今にして思えば、もっと早く気がつくべき話だ。  紆余曲折をえて、結局俺はネットカフェのパソコンを使った。ちなみに、「こんな田舎にネットカフェがあるのか?」という話はこの際、無視である。  そして、俺は出来るだけ腕の立つ……。要するに、この幽霊が『負けられる』相手を探しては対戦を申し込んだ。  しかし、幽霊もやはりプロの血が騒ぐのだろう。どうも、勝負事になると『負けたい』という気持ちはどこかに消えてしまっていた様に思う。  だから……まぁ、簡単に言えば本気で勝とうとしていた。  そのせいか、俺の予想を(はる)かに通り越し、結局、何度もネットの利用時間を延長するはめになり、ようやくその幽霊が負けて満足して成仏したのが昨日……というよりも『今日だった』のだ。  まぁ、その対戦でネットの住民が大騒ぎしていたのだから……――――あの棋士の勝負が、よっぽどの『熱戦』だった……のだろうという事は分かった。  ただ……本人が満足した上で、成仏したのならそれはそれでよかった。
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