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「こ~ は~ し~」
低い声に、
山の如く高く聳える長身が、私を真上から見下ろしている。
出たよ~~…
コイツ、いつの間に私の後ろに。
不気味に思いつつも、ここ一月の苦労を一瞬でフイにされて黙ってるわけにはいかない。
私はキッと頭上を睨んだ。
「あ、あの!いくら社長でも、ヒトの電話を勝手に切るってのは…ん?」
彼は無言で時計の方を指差した。
顔だけは笑っていても、鋭い眼光から放つ殺気は、私を射殺さんばかり。
はっと見上げれば、時計は昼休憩の1時を、2分30秒ほど割っているようだ。
ま、まずいっ!
そう思った瞬間、
ゴインッ。
頭に軽いゲンコとともに、耳に柔らかい声が響いた。
「さぁて。
休憩、おわり。仕事、する」
「うぁい…」
やっと聞こえるくらいの返事をボソッと返し、クルリと椅子を回してデスクのパソコンに向かい合う。
が、
「返事は」
すかさず、冷ややかな声。
「はいっ」
無理やり元気よく返事を返せば、背後に聳えていた影は、やっと私から離れてくれた。
あー…失敗。
変な汗、かいちゃった。
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