ダーリンがラスボス

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ダーリンがラスボス

「えー、今年も色々ありましたが、 何とか無事に今日を迎えることが出来ました。 これもひとえに、未熟な私を支えてくれた皆さんのおかげです」 パチパチパチパチ… 会場から、一斉に拍手が起こる。 4月。 帯刀さんの不在のため、2月には不渡り寸前まで追いこまれたうちの会社も、何とか3月の決算を無事に乗り切ることができた。 今日は、わが社恒例の、“お疲れ様”の打ち上げパーティ。 年明けから、みんな苦労したこともあり、今日を迎えられたことの喜びはひとしおだ。 帯刀さんの挨拶が続く。 「えーっと、ここでひとつ。 皆さんに、残念なお知らせがあります。 大学卒業からすぐにわが社に就職し、3年間、力を尽くしてくれた小橋秋乃さんですが、6月の総会をもって、退社されることになりました」 私。立ち上がって、ペコリと頭を下げる。 パチ… 小さな拍手。 3年間も一緒に過ごした割には、誰ひとり“えー”とか、“寂しい”なんて言ってくれる人はいない。 どころかみな、ニヤニヤしながら私の方を見ているだけ。 年配の人も多いし、社会人なんてこんなものだとは思うけど。 ちょっとみんな、薄情すぎやしないかい?
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