1873人が本棚に入れています
本棚に追加
と、
お調子者の夏川君が、堪えきれないように囃し立てた。
「ほらほら、そんな回りくどい言い方しないで!
社長さ~ん、もっと別な角度からの報告があるんでしょ~~??」
コホン。
帯刀さんが、ひとつ空咳をする。
「えーっと、…小橋さんは、6月を持って退社となりますが、今後も何かと、皆さんと顔を会わせることになろうかと思います」
“えー、何でだろう?分かんなーい”
会場からからかい交じりのヤジが飛ぶ。
むむっ。
突っ立ったまま、私は少し俯いた。
「…というのも…えーっと……
ここでひとつご報告があります。
全くの私事ではありますが…
7月に入籍することになりました。
ささやかながら披露宴も準備しておりますので___」
「ちょっとちょっとー、帯刀さーん。主語がなくちゃ分かんないわよー」
「誰と~、誰がぁ~~~?」
再び会場からヤジが飛ぶ。
うう、できるならこの場から走り去りたい。
それが叶わないならば、せめてこはしがちょうど入るくらいの穴がほしい。
「……あー…と」
ポリ。
彼が、むずがゆそうな顔をして鼻の頭を掻いた時。
♪Des yeux qui font baisser …♪
「ヲーホホホホッ。それはモチロン、ワッキーとアタシに決まってるでしょー!」
情熱的なシャンソンのバックミュージックとともに、どこからともなく、shinさんが現れた。
最初のコメントを投稿しよう!