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「さあ、こはし。
外堀はすでに埋められてる。
これでもう逃げ場は無いぞ。
まあ、たとえ“イヤ”って言われても、“イイ”に変わるまでしつこく言い続けるつもりだけど。
_____返事、きかせてくれる?」
う…逃げ場、無い。
そりゃあ…
史上最凶の魔王様に、ここまで追い込まれちゃったなら、魔物Aこはしはこう言わねばならんでしょう。
私は俯きがちに、それでも威勢よく声を上げた____
つもりだったが。
「……お、おうっ」
「……………」
…失敗した。
ここにきて、またもや例の変な返事。しかも腹話術みたいに妙に上ずった声で。
私ってばもう________
「……………」
あ、あれ?
今の、聞こえてなかった?
彼は、無反応。
「あ、の~」
格好悪いけど、もう一度言い直そうかと顔を上げたその時_____
「わっ」
たちまち私は、彼の胸に顔を引き戻されてしまった。
腕に力を込めすぎてるためか、彼は、ふるふると声を震わせながら、たった一言、こう言った。
「_____ありがとう」
何も、言えない。
黙って顔を擦り寄せた私を、彼はもう一度強く抱き締める。
私からも控え目に、彼の背中に両手を回した。
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