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私達は、しばらくの間そうして抱き合っていた。
なあんて。
ついもったいぶっちゃったけど、ホントは返事なんて最初から決まってたんだ。
こはしはいつも、肝心なところで、恥ずかしくなって戸惑って、チャンスをふいにするタイプ。
そんな私の性格を知って、彼はわざと私を追い込み、返事しやすくしてくれたんだ。
全く、相変わらずのお気遣いさん…イヤ、策士か。
これからは私も、彼にそんなに気ばかりつかわせてはいられない。
もう一度、ちゃんと彼を見て、私の真心、嬉しい気持ちを伝えるんだ。
「帯刀さん、あの、私……うばっ!?」
しかし、
顔を上げようとした途端、私の頭はもう一度深く彼の中に沈められてしまった。
「…なに?…こはし」
おや?
さっきより、声がもっと震えている。
やだ…
帯刀さん、もしかして泣いて…?
魔王、タテワキの泣き顔。
み、見たいっ!
ぐ、ぐぐぐぐぐっ…
真心よりも好奇心に駆られ、ぐうっと頭をもたげようとする私を、
ぎぎぎぎぎぎぎ…
彼はぎゅうぎゅう押さえつける。
「ちょっ、たへはひは…かはひひはほほひはひふふほっへ、へめへめはおはお…」
「お~ま~え~は~…すぐ調子乗りやがって…見なくていいのっ!見るなっ」
「みへてーーー!!!」
せっかくの一大イベントだったのに…
うーん、キマらない。
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