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「…おーい。
おーい、こはっちゃーん?」
「はっ!」
ハマさんに声をかけられ、私は顔を上げた。
「どうしたの?ぼんやりしちゃって」
…そうだった。
今は宴の真っ最中。
なのに、つい回想に浸ってしまった。
ハマさんは、私のグラスに気持ちばかりのビールを注ぎ、自分のグラスを“カチン”と合わせた。
「おつかれさん。
…しかし、こはっちゃんがいなくなると、急に寂しくなっちゃうねえ。
やっぱり彼の希望としては、しっかり家庭を守って欲しいって?
帯刀さん、これからはもっと大変になるだろうから」
「うーん。そういうわけじゃないんですけど…」
私はポリリと鼻を掻いた。
帯刀さんは結婚後、実家の不動産会社のほうに入り、光久の跡継ぎとして本格的に勉強を始めると決めている。
自然、今までとは勝手が違って、こっちの会社への関わりはかなり薄くなるだろう。
ただそれは、光久に無理矢理ではなく、彼自身が決めたことで。
ホントにそれでいいの?
私が訊ねると、彼はサッパリした顔で言ったものだ。
『ああ。
今回のことではっきりしたよ。いくら好きだからといって、ワンマンにはやっぱり限界ある。
もっとヒトを育てていかなきゃ。
ちょうどいい機会だと思ったんだ
俺もそろそろ、次に進んでいかないと」
そのために彼は、新たに3人もの人を雇った。彼らは6月の総会の後、私と入れかわりで来ることになっている。
そして私は…
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