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「結婚後は、月~金で帯刀家に通うことになりまして…」
「へえ、仕事みたいに?」
糸のような目を少し見開き、驚くハマさんに、私はコクンと頷いた。
何を血迷ったか、結婚後は同居を提示してきた光久。
当然ながら帯刀さんは、断固拒否った。
「ただね…」
その代替条件として光久が提示したのが、私が帯刀家に通うこと。
「ホラ、帯刀さん家、やたらとデカイじゃないですか。
なんか、色々しなくちゃならない用事があるらしく…」
『ゴメンな…』
彼は何度も謝ってくれたが、私はさほど気にしていない。
とりあえず仕事は続けるつもりだったから、そりゃあ最初は少し悩んだ。
だが、直ぐに思い直した。
旧家の慣習とか、呪われた(?)歴史とか、カラクリ屋敷的な仕掛けとか、純粋に興味あるし、それに…
あの重っくるしい家風をコハシ菌で染め直してやろうという、密かな野望もある。
何より、別居は必須だ!
二人とも、“面倒くさいことはなるべく避けたい”との意見が一致し、新居はたちまち、十分な広さのある帯刀さんのマンションに、私が転がりこむことになっている。
大して荷物のない私の荷物移動だけ、従って、引っ越しも最低限。
ラクチン、最高。
「ハハハ…相変わらずだねえ。
しかし何するんだろうね、花嫁修行ってやつかねえ?」
「さあ?何かわからないですけど、
ま、あれですよ。多分、旅館のオカミサン的なヤツじゃないかと」
「ふーん、何か楽しそうだねえ」
「そうですねえ」
どことなくほのぼのした空気が漂っていたところに、
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