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犯罪者の名は
「だから、部長~。酔いすぎですって~。」
酔って頬を赤くしながら、サラリーマンが言った。
「いーや、ちがうぞお。確か~に、見ぃた~んだぁ。」
これまた顔を赤くして、かっぷくのいい部長が力説する。
「そおですかぁ~?」
ずいぶん酔っているのだろう。
「そうですか?」が「そおですかぁ~?」になっている。
この二人は飲み会の帰り。
偶然にも、途中までだが家が同じ方向なので、そろって帰っているところだ。
そこで部長が、暗い道に人影を見たといいだしたのだ。
この現代どんな暗い場所もビルとネオンで埋め尽くされつつあるが、そこは今からビル建設を始めようという場所で暗いままだった。
追いかけるように道に入り、今に至るというわけだ。
「だぁから、絶対にちがいますってぇ~。こんなところに人がいぃるわけないじゃないですかぁ~。」
「ぜぇっったいに、いいるううう、ぞお!」
「こぉれだけ進んでぇも、誰~もいないのにぃ?」
その時だった。
目の前に、突然人が現れた。
スタン、という音とともに。
黒いサングラスに黒い上着を羽織り、しっとりとした黒髪をショートカットにしている。
年齢は、約二十~三十代。
そう。
アナたちを襲った、あの女性だ。
近くの塀に登っていて、人が通るのを見て地面にとびおりた、そんな感じを受けた。
しかし、周りに塀はない。
まさか空からでも降りてきたというのか。
サラリーマンはいっぺんに酔いが醒め……ずに、こう怒鳴った。
「おぉ前は~、だぁれぇだ~?」
全く迫力がない。
しかしそれでも、女性は声を発した。
「私の名は……。」
そこで、彼女は言葉をきった。
サングラスの奥の目が、観察するようにサラリーマンと部長を見つめている。
そのまま、しばらく沈黙が流れる。
やがて、女性が口を開いた。
「サニーだ。本名か偽名かは、お前らが決めろ。」
そして、あの虹色に輝く武器に手をかける。
再び口の中でぼそぼそ何かつぶやくと、瞬間移動と言っても過言ではない速さでサラリーマンと部長のあいだをすり抜け、背中に回り込んでいた。
二人の間をすり抜ける一瞬の間に攻撃をくわえたのか、二人が倒れた。
煙草の煙を残して、女性、サニーがその場を去る。
二人はアナたちと同様、怪我一つない気絶状態で発見された。
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