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「どや? 千円で頭が良くなる写真や。安いもんやろう」  顔面ひげもじゃで白髪を伸ばし放題のじいさんが薄汚れたカーキー色の作業着と穴だらけのズボンを履いて座り込んでいた。  その前には「頭が良くなる写真千円 お得やで!」と手書きの画用紙がおいてある。  その老人の周りに小学生十人ほどが群がっていた。その当時は、駄菓子屋で百円あれば一時間遊べた時代である。子どもたちにとって千円はあまりにも高価で、今で言うホームレスのような身なりをした老人を見て子どもたちは完全に馬鹿にしきっていた。
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