それから

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それから

もののついでだ。雅について分かったことを書いておこう。 この世界にはどうやら勉学を教えてくれる施設があるようだ。それを学校というらしい。だが、雅は学校に通っていない。 何があったか俺はわからないが時折雅が真っ赤なカバンを前に辛く悲しそうな顔をしているのを何回か見た。 おそらく、雅にとって辛い事が沢山あったんだろう。 俺はそんな時真っ先に雅の目の前で体をゴロンゴロンよじってみせる。そうすると雅はとても柔らかい笑顔を見せてくれるから。 今、俺の世界には雅しかいない。 確かに俺がいた世界では彼女は俺を殺した人間……とよく似ている。 でも、彼女とあちらの彼女は別人だ。 恨むのは筋違いな気がする。 なんせ、俺達スライムは直接危害を加えられなければ無害な存在であるものだから。 人間は嫌いだがだからと言って無関係の幼い子に牙を剥くほど俺も馬鹿じゃない。
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