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今、私は。
夜の学校の屋上にいた。
隣には、彼がいた。
私たちは、手をつないで星空を見上げていた。
なんてことない。
辛ければ。
あんな狭い世界に行かなくていい。
別の世界に行けばいいんだ。
私たち二人は。
夜間学校に通っていた。
勉強なんて、どこででもできる。
ネット世界に沈んだ私たちはそのことを知って。
今、ここにいる。
そう、しんどかったら、休めばいい。
無理して行かなければいい。
別にあの狭い世界だけが、人生の全てじゃないんだ。
まだ少しでこぼこの跡が残る彼は、柵に手をかけた。
ふわっと、気持ちの良い夜風が彼の黒髪を撫でた。
「今日は、自殺日和かな」
ぽつりと、彼は言った。
私はその手に自分の手を重ねた。
優しい確かな温もりが、私を安堵で満たす。
私は、言った。
「でも、まだ見せてないオリジナル漫画完成しちゃった」
彼が私を見た。
私はにんやり笑って「今度は本当」と言ってやった。
彼は、驚いたように目を見開いた。
そして、いつの日にか見たすっごいいい笑顔を浮かべた。
「じゃあ、今日は漫画日和だ」
fin
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