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男の子の叫びに私は固まる。
キャラ、といえば。
私の携帯に付けているキーホルダーしかいない。
「どうせ飛び降りるなら、その、それ、ほしいなぁって」
「アンタも飛び降りるんじゃなかったの?」
「や、そのつもりだったんだけどさ。その前にあのアニメ好きならちょっと語りたいなぁって。ほら、あのシーン僕好きなんだけどさ」
話す許可も聞く許可も一切していないのに男の子は饒舌にしゃべり始める。
けれど、好きなアニメの話だったこともあり私も聞いてしまった。
しかも、好みのキャラが好きとなれば、話が気になって飛び降りるどころじゃない。
「でね、あそこの涙を浮かべながら叫ぶシーンとか本当好きでさ」
「わかる。泣いちゃうよね」
「そう! そう!」
「あと私力強く抱きしめながら耳元でちょっと囁くシーンとか好きで」
「わーかーるー! 僕男なのにキュンとしちゃったよー!」
ふと気づいたら、柵にもたれかかって話し込んでいた。
日も暮れてきていて、学校から出なければいけない時間で、私は「あ、今日も死に損ねた……」と思わずつぶやいた。
すると男の子はハッとして「やばい。そうだ、やばい」と青ざめ始めた。
そういえば彼も飛び降りようとしていたんだっけ、と思い出し哀れんだ視線を送ると、彼は目の前にスマホの画面をつきつけてきた。
「今日、アニメの再放送日だ。しかも特集。あと一時間しかない」
真顔で、男の子は言った。
今日は。
間違いなく自殺日和じゃない。
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